PINHOLE CAMERA / CAMERA OBSCURA

ピンホールカメラとは

ピンホールカメラは、レンズの代わりに小さな穴を通った光で像をつくるカメラです。

3Dの光学模型を読み込んでいます。

ピンホールカメラの3D解説

2:05 · 音声なし

木の各点で反射した光が小さな穴を通り、倒立した像になる様子を3Dで示します。穴の大小によって、一点から届く光の広がりと像の鮮明さがどう変わるかを比べます。

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太陽の光が木に当たり、木の表面の各点からさまざまな方向へ反射します。木の上・中央・下の点から出る光を色で区別し、画面の横方向だけでなく奥行き方向にも光が散る様子を示します。

木とスクリーンの間に、小さな穴のある暗箱があります。壁に当たった光はそこで止まり、穴に向かった一部の光だけが箱の中へ入ります。木の異なる点からの光は同時に穴を通ります。穴は光を曲げたり集めたりしません。

穴を通った光はそのまま直進します。木の上からの光はスクリーンの下へ、下からの光は上へ届き、中央からの光は中央へ届きます。こうして上下と左右が反転した木の像ができます。

視点が光の道筋に沿って移動し、太陽から木へ、木での反射から穴へ、穴から箱の中のスクリーンへと進みます。光が穴の前後で同じ直線を進むことを、外側と内側から確かめます。

小さい穴では、木の一点から穴を通った光がスクリーンに小さな丸として広がります。木のさまざまな点に対応する丸が少しずつ増え、集まって倒立した木の細かな輪郭をつくります。

木とスクリーンの位置を変えず、穴だけを大きくします。同じ一点から届く光の丸が大きくなり、多くの点の大きな丸が重なると輪郭がぼけます。最後に小さい穴と大きい穴の像を並べ、一点の広がりの違いと像全体の違いを対応させます。

光の線や穴は見やすく拡大した模式表現で、点の丸も像のでき方を説明するための表現です。比較では明るさを調整しています。穴を小さくすれば際限なく鮮明になるわけではなく、小さすぎる穴では回折によるぼけも生じます。

ピンホールカメラとは、レンズを使わず、極小の穴(ピンホール)から入った光で像を結ぶ原理にもとづく、最も単純な写真装置です。光が直進するという性質をそのまま利用するため、像は必然的に「条件(穴の大きさ、距離、時間)」として立ち上がります。ここでは、ピンホール写真とカメラ・オブスキュラの関係を含め、原理・構造・歴史・表現の観点から整理します。

01 / PRINCIPLE

ピンホールカメラの原理と仕組み

ピンホールカメラの原理は、穴を通った光が直進して投影されることで像が生まれる、というものです。穴が大きいほど光は多く入りますが像は甘くなります。穴を小さくすると一定の範囲では像が締まりますが、露出時間は長くなり、小さくし過ぎると回折で再び像が甘くなります。この「明るさ・鮮明さ・時間のトレードオフ」が、ピンホールカメラの仕組みの基本であり、像ができる条件そのものです。

穴径
像のシャープさと明るさを左右する
投影距離
像の大きさと明るさを左右する
露出時間
像の成立そのものを決める
Fading Light / 2021
この写真の作品を見る:Fading Light / 2021

02 / DEFINITION

ピンホールカメラの定義

ピンホールカメラは、レンズの代わりに小さな穴を通した光で像を結ぶカメラです。画像を「鮮明にする」方向へ最適化された一般的なカメラと異なり、ピンホールカメラは像の成立条件が露出時間や穴径、被写体距離として可視化されやすい点が特徴です。

そのため、ピンホールカメラは撮影機材であると同時に、光の振る舞いと視覚の前提を観察するための装置としても扱われます。

03 / STRUCTURE

構造(最小構成)

ピンホールカメラの最小構成は、次の3要素です。

  1. 01遮光された箱(光を制御する空間)
  2. 02ピンホール(光の入口)
  3. 03感光面(フィルム/印画紙/撮像素子など)

この構造は拡張が容易で、箱を大きくすれば巨大カメラになり、建物や部屋そのものを遮光して穴を開ければ、空間がカメラ・オブスキュラとして機能します。

ダンボールデジカメラ3号 heuristic撮影用 / 2011
このカメラで撮影した作品を見る:heuristic / 2011

04 / CAMERA OBSCURA

カメラ・オブスキュラとの関係

カメラ・オブスキュラ(camera obscura)は、暗い部屋や箱の内側に外の景色を投影する装置で、小さな穴を使う型とレンズを使う型があります。

ピンホールカメラは、レンズの代わりに小さな穴で像を結びます。レンズを使わないカメラ・オブスキュラと同じ原理ですが、箱にも部屋にもできるため、大きさや携帯できるかどうかだけでは区別できません。

時の回廊用カメラ / 2006
このカメラで撮影した作品を見る:時の回廊 / 2006

05 / HISTORY

ピンホールカメラの歴史

穴が像を結ぶという観察は、写真より2000年以上前から書き残されてきました。ここでは要点だけを示します。14段階の年表、8つの小話、24件の出典は独立したページにまとめています。

  1. 紀元前4〜3世紀ごろ

    『墨子』の記述小さな穴で光が交差し、像が上下逆になる

  2. 11世紀初頭

    イブン・アル=ハイサム暗い空間の小孔による像の形成を記述

  3. 1544年

    ゲンマ・フリシウスの日食観測暗室への投影を図として出版

  4. 1826〜1827年ごろ

    ニエプス投影像を消えない像として定着──写真の始まり

  5. 1890年

    ジョージ・デイヴィソンピンホール写真が表現として評価される

06 / EXPRESSION

ピンホール写真の表現

ピンホール写真は、単に「レトロ」「柔らかい」では終わりません。レンズが前提としている解像や焦点という価値基準から距離を取り、像が成立する条件そのものを作品の主題へ引き上げられる点に強みがあります。

  • 像が「条件」として見える(時間・距離・穴)
  • 焦点の概念が弱まり、空間の均質さが強まる
  • 装置の設計そのものが制作行為になる

07 / FAQ

よくある質問

ピンホールカメラの原理を簡単に教えてください。

レンズを使わず、小さな穴を通った光が直進して、暗い箱の内側に上下左右が反転した像を結びます。穴を小さくすると一定の範囲では像が締まりますが、入る光は減って露出時間が長くなり、小さくし過ぎると回折で再び像が甘くなります。

ピンホールカメラは自作できますか?

可能です。遮光できる箱、ピンホール、感光面の3要素が揃えば成立します。重要なのは「穴の精度」と「遮光」で、ここが像の安定性に直結します。

カメラ・オブスキュラとピンホールカメラの違いは何ですか?

カメラ・オブスキュラは、暗い部屋や箱の内側に外の景色を投影する装置で、レンズを使う型もあります。ピンホールカメラは、レンズの代わりに小さな穴で像を結ぶカメラです。大きさだけで両者を区別することはできません。

ピンホール写真が「甘く」見えるのはなぜですか?

穴径が大きいと多方向の光が重なり、像がにじみます。小さくすると一定の範囲では像が締まりますが、小さくし過ぎると回折で再びやわらかくなります。小径では光量も減るため、露出時間が長くなり、動きの影響も受けやすくなります。

参照資料

  1. National Science and Media Museum — Introduction to the Camera Obscura
  2. MIT Computational Photography — Lens image formation and diffraction
  3. History of Science Museum, University of Oxford — Camera obscura