MAKING AN EXHIBITION
展覧会の 作り方
搬入当日になんとなく展示を始めると、あせるし、時間はかかるし、材料が足りなくなる。沢田マンションギャラリーを7年運営し、自分でも搬入を重ねてきた経験から、壁の割り付けの計算と、当日までにやっておくことをまとめます。
01 / WHY
展示は、見せることのほう
作品がないと展示はできません。けれど、作品があれば展示になるわけでもない。壁に掛けた時点で、それは自分ひとりのものではなくなります。
自己満足と、コミュニケーション。作品をどう見せるかを考えるところが、展示のいちばん面白い部分です。制作と展示は別の仕事だと思っておくといいと思います。
02 / PREPARE
「雰囲気搬入」をやめる
搬入当日、なんとなくで展示を始める。よくやります。結果はだいたい決まっていて、あせる、時間がかかる、材料が足りなくなる。
準備が大切です。当日にやるのは、決めたとおりに掛けることだけにしておく。
03 / MODEL
1/10の模型を作る
作品を写真に撮って、1/10の大きさでプリントアウトする。それを壁の縮尺模型に並べれば、展示のイメージがつかめます。実物を持ち上げなくていいので、何十通りでも試せます。
A4の作品なら、1/10で21ミリ。手のひらの上で展覧会を組めます。
04 / VENUE
会場でできることを先に確かめる
釘は打てるか。両面テープは使えるか。ここを確かめずに計画を立てると、当日に全部やり直しになります。
民家やお寺を使う街歩き系のグループ展は、とくに制限が多い。壁に触れないこともあります。使えるものを先に聞いてから、展示方法を決めてください。
05 / CENTER
中心を揃える
額の大きさがばらばらでも、上端や下端ではなく中心を揃えます。そうすると、大きさが違っても一列に見えます。
縦400mmの額なら中心は上端から200mm、縦600mmなら300mmです。この中心を同じ高さの線に揃えます。中心線は鑑賞者の目線の高さを目安にし、作品の大きさ、会場、立つ・座るなどの鑑賞姿勢に合わせて床からの高さを調整します。壁の高さを半分にして決めるものではありません。
図は額の中心を揃える関係を示しています。中心線の床からの高さは、目線と展示条件に合わせて決めます。
06 / SPACING
隙間の計算
幅3000の壁に、幅400の額を5枚並べます。額の合計は2000。残りは1000です。
隙間は6か所あります。額と額のあいだが4つ、両端が2つ。この1000を6で割ってもいいのですが、両端を広めにとるほうが落ち着きます。
両端を250ずつにすると、500を使うので残りは500。額間の4か所で割って、125ずつ。これで壁ぴったりに収まります。
250 + 400×5 + 125×4 + 250 = 3000
250 + 400×5 + 125×4 + 250 = 3000
07 / ARRANGE
並べ方
定番は横一列です。迷ったらこれで問題ありません。数が多いときは、まず壁の中心に一枚を置いて、そこから左右に振り分けていくと崩れにくい。
明るい展示室と暗い展示室では、同じ作品でも見え方が変わります。会場の照明も、展示方法のうちです。
08 / SUBTRACT
捨てる勇気
全部を掛けたくなりますが、作品数より空間のほうが大切です。気になる作品は外す。減らしたほうが、残した作品はよく見えます。
一枚ずつ見るのではなく、離れて全体を見渡してください。並べているあいだは近くにいるので、気づけません。
09 / PLACE
場所に合わせる
13年前、代々木公園のブルーテント村にある喫茶エノアールで、小川てつオさんの作品を見ました。白い壁のギャラリーではない場所で、その場所に合わせて置かれた作品でした。
会場に合わせて展示する。決まった見せ方を持ち込むのではなく、その場所でいちばん良い置き方を探すほうが、結局うまくいきます。
10 / PRACTICE
うまくなるには
- 人の展示を見る。どのように展示しているかを観察する
- 展示の経験を積む。回数を重ねると搬入の技術が上がる
常に成功するとは限らないので、失敗を恐れずに挑戦してください。たくさん展示を見ることが、いちばん近道です。
「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」——ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』
APP
この計算をするアプリを作りました
壁と作品の寸法を入れると、等間隔の割り付けと、ビスやフックを打つ位置を出します。人のシルエットと目線の高さも表示されるので、掛ける高さの見当がつきます。結果はPDFで書き出せるので、搬入のときに印刷して持っていけます。
ArtHang出典:岡本明才によるワークショップ資料『展覧会の作り方』(2018年)