02 / CONVERGENCE
レンズは光を集めている
物体の一点からは、あらゆる方向へ光が広がっていきます。この広がった光のうち、レンズに届いた分だけが屈折し、向きを変えて再び一点へ集まります。この集まる点が結像点です。
ピンホールは光を曲げません。小さな穴が、通り抜けられる方向を制限することで像をつくります。集めるのではなく、絞るのです。だからピンホールは暗く、レンズは明るい。同じ「像ができる」でも、成り立ちが根本的に違います。
レンズを通った光が一点へ集まるのは、決まった条件を満たしたときだけです。その条件から外れると、光は一点に集まりきらず、面の上で幅を持ちます。この幅が、私たちが「ぼけ」と呼んでいるものです。
03 / FOCAL LENGTH
焦点距離とは何か
無限遠から来る光、つまりほぼ平行に届く光をレンズに通すと、後ろ側の一点に集まります。レンズからその点までの距離が焦点距離です。50mmのレンズなら、平行光は50mm後ろで一点になります。
焦点距離が長いほど、同じ被写体でも像は大きくなります。望遠レンズが遠くのものを大きく写せるのはこのためです。ただし注意が必要なのは、焦点距離を変えても遠近の関係そのものは変わらないことです。カメラの位置が同じなら、手前と奥の見え方の比率は同じまま、切り取る範囲だけが変わります。
焦点距離は、レンズの屈折力の強さと言い換えることもできます。短い焦点距離は強く曲げ、長い焦点距離はゆるやかに曲げます。
04 / APERTURE
F値と絞り
F値は、焦点距離を有効口径で割った値です。f/2.8なら、有効口径は焦点距離の2.8分の1。数字が小さいほど口径が大きく、通る光の量が多くなります。
同じF値なら、焦点距離が変わっても像面の明るさはほぼ同じになります。F値が焦点距離と口径の比で決められているのは、このためです。露出を決めるときに便利な数字として設計されています。
絞りを絞る、つまりF値を大きくすると、レンズを通る光束が細くなります。細い光束は、結像点からずれた面の上でも狭い範囲にしか広がりません。絞るとピントの合う範囲が広がって見えるのは、この幾何学的な理由によります。
05 / FOCUS
ピントと錯乱円
被写体までの距離が変わると、結像点の位置も変わります。近いものほど結像点は後ろへ下がります。センサーやフィルムの位置は固定されているので、そのままでは結像点とずれてしまいます。
ピントを合わせるとは、この結像点を撮像面へ一致させる操作です。一般的なカメラでは、センサーを動かすのではなく、レンズ群を前後に動かして調整します。この模型でも、センサーは固定したままレンズ群が動きます。
結像点が撮像面からずれていると、そこに届く光束はまだ一点に集まりきっていないか、いったん集まってから再び広がっています。どちらの場合も、撮像面の上では円形の広がりになります。これが錯乱円です。錯乱円が小さいほど、その被写体はシャープに見えます。
06 / DEPTH OF FIELD
被写界深度はなぜ変わるのか
厳密に結像点が撮像面と一致するのは、ある一つの距離だけです。しかし錯乱円が十分に小さければ、人の目にはシャープに見えます。この「シャープに見える」と判断できる範囲が被写界深度です。
被写界深度は、絞り、焦点距離、被写体までの距離、そして許容する錯乱円の大きさで決まります。絞るほど、焦点距離が短いほど、被写体が遠いほど、範囲は広がります。逆に開けるほど、焦点距離が長いほど、被写体が近いほど、範囲は狭くなります。
つまり被写界深度は、レンズに固有の性質ではなく、条件の組み合わせによって決まる結果です。冒頭の模型で4つの条件を動かすと、選んだ被写体の錯乱円径がその場で変わります。
07 / VS PINHOLE
ピンホールとの違い
ピンホールカメラには、レンズが持つ意味での「ピント」がありません。穴を通った光は曲がらず直進するので、近いものも遠いものも同じように投影されます。被写界深度という考え方が要らないのです。
そのかわり、穴の大きさそのものが像の甘さを決めます。穴が大きければ一点から出た光は像面で広い範囲に届き、隣り合う点と重なってぼけます。小さくすれば締まりますが、光量が減って露出時間が長くなり、小さくし過ぎると回折で再び甘くなります。
レンズは「集めることで明るく鮮明にする」方向へ、ピンホールは「絞ることで成立させる」方向へ進んだ装置です。どちらが優れているかではなく、像ができる条件の設定が違います。

08 / REFERENCES