ART & MONEY

アートの値段はどう決まるのか

作品にいくらの値段をつければいいのか。画廊は何を見て作家を選ぶのか。沢田マンションギャラリーを7年運営し、自分の作品を売り、ワークショップで話してきた内容をまとめます。作家として値段と向き合った当事者の記録です。

01 / GOODS

普通の商品の値段は、どう決まるか

値段は、欲しい人と売りたい人の意見が一致したところで決まります。需要量より供給量が少なければ価格は上がり、多ければ下がる。物価の変動もあるので、価値は上がったり下がったりします。

メルカリで考えると分かりやすい。値段を決めるのは売る人です。売れなければ値段を下げなければならない。値下げをくりかえせば、いつか買う人があらわれる。

02 / DEFINITION

アートは商品なのか

商品とは、売買の目的物としての財貨(原則として動産)です。「アートは作品であり、商品とは違う」とよく言われます。しかし値段の話をするあいだは、この価値観から一度離れましょう。大前提として、お金をもらって売るのですから。

売買契約と所有権。売る人が財産権(所有権)を買う人に渡し、買う人がお金を支払う。それで契約が成立します。コンビニでの買い物も同じ仕組みです。所有権とは、人が物を直接支配する権利のことです。

ローンなど、お金を借りて購入したものは、お金を貸した人が所有権をもっています。

03 / MARKET

プライマリーとセカンダリー

アートの市場は2つに分かれています。この区別が、値段の話のいちばん基礎になります。

プライマリー(一次市場)
画廊・ギャラリー・作家から直接購入すること
セカンダリー(二次市場)
オークションで購入すること

セカンダリーでどれだけ高く売れても、作家にお金は入りません。作家が受け取るのはプライマリーで売れたときだけです。

アートが売買される2つの市場

プライマリー(一次市場)

  1. アーティスト
  2. 画廊
  3. 知人・コレクター・画廊

セカンダリー(二次市場)

  1. コレクター・画廊
  2. オークション
  3. コレクター・画廊

セカンダリーでどれだけ高く売れても、作家にお金は入らない。

04 / WHERE

どこで売るか

画廊の委託販売
画廊に作品を預けて売ってもらう
オークション
競売。一番高い金額で落札した人が買える。ヤフオクと同じシステム
直接売買
作家が自分で売る。金額は自分で決める

05 / COMMUNITY

どのコミュニティで売るかで、値段は大きく変わる

同じ100万円でも、意味がまったく違います。

  • 高知の無名なアーティスト100万円
  • 高知の有名なアーティスト100万円
  • 全国で有名なアーティスト100万円

コミュニティによって、アートを買う人の人口そのものが変わります。ニューヨークと高知では、同じ作品でも成立する金額が違う。値段は作品の中だけで決まるのではなく、どこで売るかで決まる部分が大きいのです。

2021年頃からアートバブルが始まったと言われますが、高知にいて、それを感じることはできませんでした。

06 / GALLERY

画廊には大きく2種類あり、作家の負担も、値段を決める人も違います。

コマーシャルギャラリー貸しギャラリー
展示できる条件ギャラリーに選ばれないと展示できない利用料を払えば展示できる
作家の負担ギャラリー利用料は不要ギャラリー利用料が必要
売れたときの手数料販売手数料 40〜50%が相場売上の 0〜20%が相場
値段を決めるのはギャラリーが決めることが多い自分で決めることがほとんど

コマーシャルギャラリーにも特徴があります。アーティストを応援する型、アーティストを育てる型、とにかく稼ぎたい型。お金があってアートを盛り上げたいオーナーもいれば、そうでない場合もあります。

そしてコマーシャルギャラリーも必死です。家賃・光熱費・人件費・広告費といった経費がかかり、利益を出して生活しなければいけません。高く売りたいのは当然のことです。

07 / SELECTION

画廊が作家を選ぶ優先順位

ギャラリーが作家を選ぶとき、見ている順番があります。

コンテスト受賞歴
美術館などの展示実績
コレクションの実績
マスメディア出演実績
アーティストのキャラ
  1. 売れるアーティストなのか
  2. 将来性があるか
  3. 制作をやめない人か
  4. 人柄
  5. 相性

ギャラリーは値段を高くして売りたい。そのために、購入者に説得力のある材料をほしがります。

これらの実績を総合し、他のアーティストと比較して金額を決めます。

08 / VOICES

市場の本音

ワークショップで話してきたなかで、いちばん反応があるのがこの部分です。いずれも実際に聞いた話で、話し手は明かしません。

ある作家の初期の作品を、数十年前に40万円で購入した。オークションで売ったら4,000万円になった。

とあるコレクターから聞いた話

現存する人気アーティストは、作品を作るな。

オークション関係者の本音

供給が増えれば値が下がる。需要と供給の話が、そのまま作家の生き方に跳ね返ってきます。

09 / TIMING

値段を上げるタイミング

注目を浴びると売れる。売れると人が集まる。人が集まるとギャラリーと契約できる。この順番です。

値段を上げられるのは、購入者が「その値段でもほしい」と思う材料がそろったときです。自分の都合ではなく、自分が活動するコミュニティのなかでの位置が決めます。

10 / BUSINESS

アーティストは個人事業主です

作品を売ってお金を受け取る以上、アーティストは個人事業主です。利益が出たら、税金の申告が必要になります。

いくらから必要になるかは、副業か専業かといった条件で変わりますし、基準も改定されます。金額は国税庁の最新の案内で確認してください。

出典:岡本明才によるワークショップ資料『アートとお金』(2023年)